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一匹狼になりてぇなぁ。でも,どうしたって迷える子羊から脱せる気がしない。いや,「子羊」 もかわいらしくてダメだ。うまい表現が見あたらない。
色々な言葉が聞こえてきて惨めな気もちになる。
夜が好きだ。根っからのロング・スリーパーなので,夜
別に朝や昼が嫌いなわけではない。ただ,その時間帯は身の周りにひとを感じるから,必然的に居たたまれない。朝昼晩自体はどれも好き。
「いつか必ず晴れるから雨は好きだ」 っていうフレーズ,嫌いだ。"雨は悪しきもの" という前提ありきで,決して雨そのものを見てはいない。雨がかわいそうだ。
水滴のまえに強い高熱光源を置くと,水滴はまたたく間に蒸散する
光輝く強く正しいものを目の当たりにしたとき,ひとは多かれ少なかれ,"恥" に似た感情を抱くのではないか。少なくとも自分はそうだ。
話し手が聴衆へなにか質問を投げかける ―― あまりにも簡単な問いかけ。僕でさえ答えが分かる。
でも,挙手して答えるのは,なんと無くためらわれる。みんな分かっている筈だし,それに進んで答えるのも不恰好というか,逆にバカっぽいというか。だいたい,自分が根本的に勘違いしていて,実はもっと難しい問いなのかも知れない。赤っ恥を掻くかも知れない。
―― 嘘だ。答えは見えすいていた。もしかしたら違うかも,なんて露ほども思っていやしない。答えが分かっているのに怖じ気づいて答えられない小心さを,単に正当化しようとしているだけだ。
でも,それも数瞬間のこと。実際は,質問を受け,すぐにひとりが堂々と答えた。しかし,その答えは考えていたものとは違った。はは,威勢良く答えた癖にまちがっていやがる ―― ニヤニヤしかけたのも束の間,話し手が,その答えが正しいことを明かした。
表面的には,ヘタに答えて恥を掻かずに済んだのかも知れない。けれど,内実は違う。分かっているのに色々理由付けして答えなかった情け無さ,まちがったひとを内心で
―― そういう自分に比べ,怯むこと無くすぐさま挙手し,答えを明晰にいい当てたひと。これを考えると,「ああ,自分なんか消えたほうが良い。生きているだけ恥
「話し手から聴衆への問いかけ」 というシチュエーションに限った話ではない *1。力強い正しさを見せつけられ,自分の過ちが浮き彫りになる。これは良くあることだ。正真正銘の正しさのまえでは,あれやこれや正当化してきた自分の考えや行動なんて,チリ紙のごとく吹きとばされてしまう。
特にオチは無いや ……。正しさに直面するたびに自分の浅ましさを痛感する,これはどうしようも無い。
追記 (2016年1月1日)
自ら答えたひとが予想通りまちがっていて,やはり僕の答えのほうが合っていたとしても,話は変わらない。このことに今さら気づいた。
そうだ。答えの正否が問題なのではない。もっと深いところにある "正しさ" について話したい筈だった。もし誤りだったとしても,先陣を切って答えた彼は,分かっている (と思いこんでいる) 癖に逃げる僕よりも,遙かに力強い。
こう,自分でも気づかないうちに話を矮小化していて *2,この記事自体が自分の浅さを露呈しているようで,全文を削除したいぐらいだ ……。
カムパネルラがいないのは,僕がジョバンニではないからだ
周りのひとが全員エイリアンに思える。
嬉しいことが1あっても,嫌なこと10で消しとばされてしまう。友人や知人の類はいないし,親にも祖父母にも蔑視されている。この現実世界で,僕が死んで喜ぶひとはいても,悲しんでくれるひとはいない。
短くはない時間を生きてきた筈なのに,なにか誇れるスキルを習得するでもなく,他者嫌悪と自己嫌悪とを往復するばかりの,ほんとうに空っぽの人生だったなぁ。
切実になぜ生きているのだろう。ときどき音楽を聴いたり読書したりするけれど,どういうか,それらも生を根本から魅力的にしてくれはしない。嫌ないい方だが,時間潰しの範疇を超えない。―― そうボヤいていても,自殺する気は無いし,する勇気も無いのだけど (要は死にたくない)。
追記 (2015年12月29日)
おなじような位置にいるひと,つまり,友人はおらず家族にも疎まれ,スキル皆無,生を力強く牽引してくれる趣味も持たず,いつも身の周りのひとに不信感や憎悪を募らせながら,いっぽうで 「どうして自分はこうクズなのか」 と自己嫌悪を
空き地の孤独の夢
大学1年生の10月のこと。
僕は友人無しの人嫌い,いわゆる 「ぼっち」 だったので *1,講義の無い空きコマはひとりで時間を潰していた。
うちの大学は偏差値40代の無名大学で *2,キャンパスも高校と変わらないような小ぢんまりしたものだ。屋内で時間を潰せる場所なんて,食堂・図書室・コンピューター室 ―― 精々この3ヶ所しかない。
食堂は論外だ。
図書室は微妙だった。僕は,図書室は本を読んだり課題をしたり,そういうための空間だと思っているのだけど,周りの利用者を見ると,スマートフォンでゲームをしている人が半数に思えた。利用者が多い時間帯だと,しょっちゅうクスクス笑い声が聞こえてくるし,それ以前に,職員らの雑談が大きくて耳障りだった *3。ひとり席は無く,つい立ての無い大机が並んでいるレイアウトも,斜め向かいに誰かが座るだけで動悸してしまう僕には,好ましくなかった。
コンピューター室も似たようなものだ。図書室よりも閑散としている点は嬉しかったけど,音を出しながらゲームしてゲラゲラ盛りあがっているグループがいたりして,結局安定して落ちつける場所ではない。コンピューター室でひとり本を読んでいると,4,5人のグループがなにかまくし立てながら入室してきて,後ろのほうでゲームだか動画再生だかをおっ始め,泣く泣く図書室へ逃げ込む,ということが良くあった。
こういう感じで,屋内で時間を潰せそうな (食堂・) 図書室・コンピューター室は,どこも自分に合わなかった。
先に書いておくべきだったけれど,うちの大学はド田舎もド田舎,山の中腹のようなところにあって,周りには山々とまばらに民家があるだけだ。学外に落ちつける場所を望むべくも無い (まぁ,仮に喫茶店とかがあっても行かなかっただろう) *4。
学内外共に居場所が無い。その上,他人の (特に中途半端に見しっている同級生の) 姿を見たくない/見られたくないという,そもそもの人嫌いな性分が昂じ,やがて 「まともなところでなくたって良い。最悪山の中でも,ともかく人気の無いところに行こう」 と考えるようになった。
そして,大学周りを歩きまわったりGoogle Mapsの航空写真と睨めっこしたりした甲斐あって,大学横の坂道から脇に逸れている謎の小道を航空写真で見つけた。
実際にその暗く人気の無い大学横の坂道を下りていってみると,ガード・レールの途ぎれ目に 「立入禁止」 の錆びたチェーンが張ってあって,そこから確かに砂利の脇道が始まっている。注意しない限り気づかなかっただろう。チェーンを跨いで,下り坂になっている砂利道をドキドキしながら下りていった。横で木々が茂る一層暗い道を下ること数分,開けた明るい砂利の広場に出た。
ここだ,と思った。航空写真から,なにか空き地らしきところに通じていることは予測していたのだけど,半信半疑だった。朽ちた大きな木板が一角に積みあげられているほかは,ベンチもなにも無い。昔は資材置き場だったのかも知れない。砂利のあいだからは雑草がまばらに生えている。僕には十分だった。
その日から,昼休みや講義の空きコマはそこで過ごすようになった。要らないタオルを敷いて座り,読書したり音楽を聴いたり,でも大抵はなにをするでもなくボーとして過ごした。森の音を聴いているだけで幸せになれた。自宅へ帰るのも憂鬱だったから,その日の全講義が終わったあとも,まっ暗になるまでそこにいた。大学から徒歩数分の範囲に,こういう静かで脱俗的なところを見つけれて,僕はほんとうに嬉しかった。
空き地を見つけてから1週間目ぐらいの放課後。もう習慣となったようにそこで時間を過ごしていた。日が暮れつつあった。道の遠くからなにかガヤガヤ聞こえてきて,血の気が引いた。音に神経を集中させる。荒々しい笑い声が明らかに近づいてきている。すべてを察し,頭がまっ白になりながらも,ともかく敷いていたタオルをリュックにしまい込んで,立ちあがった。しかし,どうしようも無かった。ここへの道は一本だけで,逃げ道なんか無い。
頭がワンワンしてなにも考えられず棒立ちになっていると,やがてチャラい感じの男女10人ほどが入ってきた。バーベキュー用具を持っていた。ゲラゲラ笑いながらやってきた彼らは,僕に気づくとハタと黙った。無理も無い。夕暮れ時の空き地に,得体の知れないモヤシ野郎がつっ立っていたのだから。「え。ちょ,おまえなにしてんの?」 プロレスラーみたいな体格の男が嘲るように訊いてきた。「もしかしてボク,ここでセンズリこいてたとか?」 別の奴がそういうと,ドッと爆笑が起こった。僕が泣きそうになりながら無言で去ろうとすると,「おーい答えろよーう」 とか色々野次を飛ばされた。道へ戻ろうと彼らの横を強引に通りぬけたとき,肘でど突かれた。後ろからギャハハ笑う声が響いてきた。
以後,もうそこには行っていない。
冷静に考えれば,孤立した僕が独力で見つけれる 「乱痴気騒ぎに打ってつけの穴場」 を,人脈やら情報網やらを持っている 「ふつうの学生」 が,知らない筈が無いのだろう。あそこを 「自分のみが知る聖地」 だと思い込んでいた自分がバカだった。それだけの話だ。
最後に。自分の大学のことを非常識な学生ばかりであるかのように書いたけれど,もちろん,向上心を持って熱心に勉強する見あげた人も数多くいる。僕自身は大学内でも中ぐらいの成績で,ほかの学生を偉そうに非難する資格なんてハナから無いのかも知れない。公正のために一応それだけ。